特定行政書士を目指す方へ
はじめに
来年度以降に特定行政書士を目指す方へ贈る考査対策の記録です。
本記事は、あくまでも考査合格(考査修了)にフォーカスを当てたものであり、特定行政書士として実務に対応するためには、更なる研鑽が必要となりますのでご注意ください。
また、当方は考査前年度の行政書士試験に合格し、登録・開業に至ったという経緯がございますので、本記事は「行政書士試験合格者」向けとなります。ご了承ください。
きっかけ
特定行政書士を志したきっかけは、非常にシンプルでした。
行政書士を生業とする以上、帯刀しておくべき武器であり、街の身近な法律家として社会的役割を果たしていくためには欠かせないものであると考えていたためです。
また、考査の対策上、行政書士試験を通じて得た知識を流用することができるという点も大きな理由でした。時間を費やして身に着けた知識は換価できない財産です。これを活かさないという選択肢はありませんでした。
行動開始
本格的に考査対策を始めたのは7月下旬からでした。
別記事にてご紹介したとおり、考査の受験資格を有するためには、VOD講義を所定の期間内に所定の時間受講する必要がありますが、その受講期間前に行政法(行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法)の復習を行う必要があると考えていたためです。
巷でよく使用されている表現ですが、資格試験の挑戦は、階段で上がっていくものではなく、下っているエスカレーターを逆から登っていくものです。つまり、途中で立ち止まると実力がどんどん下がってしまいますので、行政書士試験の合格発表後も隙間時間で条文に触れておくことをお勧めいたします。
使用教材
まずは、抜けつつある行政法(行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法)の条文知識を思い出す作業です。後述しますが、考査合格の肝はこの行政法3法の学習です。この3法の重要条文を理解・記憶することが必要になります。
行政書士試験は、アガルートの講座で学習しておりましたので、受講期間内にダウンロードした音声データと当時のテキスト(六法)を併用して、条文の逐条学習から始めました。
行政書士試験では、ページが破れたり折り目がついたりするまで何度も条文を引いておりました。特定行政書士の考査も突破できましたので、本書に触れる機会は少なくなりましたが、法律を扱う実務家として破棄するという選択肢はありません。共に伴走した思い出の一冊ですので、今でも弊所の書庫に保管してあります。
さて、以下は条文学習の参考までに。お目汚し失礼いたします。
マーカーの使い方について、皆さんそれぞれのマイルールはあるかと思いますが、私が定めていたルールは下記のとおりです。
- 目 次 = ブルー
- 法的義務 = ピンク
- 努力義務 = イエロー
- 数 字 = グリーン
- それ以外 = オレンジ
マーカーにより学習の進行状況を可視化できることはもちろんですが、ルール化された色分けによって、視覚的に情報を整理しやすくなります。つまり、色で暗記をするというイメージです。ただ漫然とマーカーを引く学習では実力が伸びないと、過去の失敗から学びました。
そして、いよいよ18時間のビデオ講義です。新しく学ぶ分野である「要件事実」と「事実認定論」のチャプターのみ2回視聴しました。
インプットを終え、最後は隙間時間でアウトプットです。こちらも後述しますが、アウトプットは行政法のみに絞りました。つまり、社会人の勉強における選択と集中です。
なお、純粋なアウトプットというよりも「記憶の思い出し作業」でした。行政書士試験を受験したときのレベルにまで実力を戻すことができれば、特定行政書士の考査における行政法は難なく解くことができると判断したためです。
よって、行政書士試験の際に使用した教材でアウトプットを図りました。参考までに、本考査を受験するにあたり、使用した教材は下記の10冊でした。
得点戦略
「今後、考査問題の傾向と合格率は変わらない」という前提にはなりますが、得点戦略は非常にシンプルです。
それは、行政法(行政手続法・行政不服審査法・行政事件訴訟法)の3法で満点を目指すというものです。
傾向が変わらなければ、30問中20問が行政法です。合格基準点は公表されておりませんが、18問正解(得点率:6割)が合格のボーダーラインであると推測されますので、行政法で満点を取れば合格できるといえるでしょう。しかし、本考査は絶対評価ではなく相対評価であると推測されるため、最低でも21問正解(得点率:7割)は目指したいところです。
また、ケアレスミスも想定されますので、行政法での失点は最小限に抑え、得点源である「特定行政書士の倫理」や「行政書士の業務範囲」で上乗せ点を確保することが重要です。なお、「民事訴訟法」と「要件事実・事実認定論」につきましては、特定行政書士の実務上は必要不可欠な知識ですが、考査対策上深追いは禁物です。手を広げずに必要最低限の重要論点だけ抑え、取れる問題を確実に正解する手法がベターです。
手前味噌ではございますが、当方の自己採点結果は下記のとおりです。
24問/30問(得点率:8割)
(内訳、行政法19問/20問)
行政書士試験との比較になりますが、判例問題はほとんど出題されない傾向にあります。また、全30問の4肢択一であり、考査時間は2時間ですので、事務処理能力は求められておらず、条文知識勝負といえるでしょう。
最後に
令和元年12月4日に公布、令和3年6月4日に施行された「行政書士法の一部を改正する法律」により、「国民の権利利益の実現に資すること」が明記されました。
特定行政書士の制度は、まさに「国民の権利利益の実現に資する」ための仕組みであり、紛争性を有する事案における手続について書類の作成を行い、また、その手続の代理を業とすることができるとされたことは、 国民の皆さまからの期待も大きいものであると考えております。
考査合格(考査修了)はゴールではなく、新たなスタートラインです。国民の皆さまの利便に資するよう、一層努力してまいります。